弘前公園の近くを歩いていると、赤い屋根に白い壁の洋風建築が目に入る。私も何度も前を通っていたが、それが何の建物なのか知らなかった。そこで今回、旧弘前市立図書館を訪れ、弘前市教育委員会文化財課の高木さんに話を伺った。

旧弘前市立図書館は、もともとあった私立図書館が旧帝国陸軍第八師団の兵舎として徴用されていた。それを機に公立図書館とするため建てられ、市に寄贈された建物である。陸軍関連の仕事により利益を得た五人の実業家が、その利益を地元に還元するために図書館となる建物を建て、市へ寄贈した。その内の1人が大工の棟梁である堀江佐吉だった。堀江佐吉は日米和親条約が締結されて開港された際、函館で洋風建築を学び、堀江佐吉のアイデアで、ルネサンス様式の建物となったのである。昭和6年(1931)まで市立図書館として利用され、その後移築し、下宿として使用された後、平成2年(1990)に現在の場所に移築・復元され、平成5年(1993)に県重宝に指定されたのである。

特徴的な八角形の双塔は、当時まだ電気が一般的ではなかったため、多くの窓を設けて光を取り入れる工夫だったのではないかと高木さんは説明した。
1階には図書室、婦人閲覧室、2階には普通閲覧室が設けられている。当時は男女の役割の違いが現在よりも強く意識されており、閲覧室が男女で分けられていることからも、明治時代の社会の価値観をうかがうことができる。


現在では年間約4万人が訪れ、桜まつりの時期には多くの観光客でにぎわう。「かわいい」「きれい」といった感想も多く寄せられており、写真スポットとして親しまれているという。また、地元の方からは「堀江佐吉が作ったのだから何としてでも残していきたい」「小さい頃からの親しみがあるから残してほしい」という声が多い。旧弘前市立図書館が残されてきたのは、地元の人々に長く親しまれているからなのである。
一方で、建物の維持には多くの課題もある。文化財建造物であるため修理には既存の部材を可能な限り残し、当時と同等の部材・工法で修理する必要がある。そのため費用も高額なのだ。冬には雪が窓辺まで積もるため、水に弱い漆喰壁を傷めないよう何度も雪かきを行う大変さもあると、高木さんは話してくれた。

2階の普通閲覧室。地方出版物や同人誌が展示されている。床は手がかけられておらず、当時のまま。
取材の中で特に驚いたのは、木造建築であるため、風の強い日や、少し歩いた振動だけでも建物が揺れるという話だった。
100年以上前の建物が今も残されていることは決して当たり前ではない。旧弘前市立図書館は、歴史的価値だけでなく、多くの人の思いによって受け継がれてきた文化財であることを実感した。
施設名:旧弘前市立図書館
所在地:弘前市大字下白銀町2-1(追手門広場内)
アクセス:JR弘前駅より徒歩30分。弘南バス「駒越線」または「茂森新町線」市役所前下車・徒歩1分。
開館時間:午前9時~午後5時
旧弘前市立図書館についてhttps://www.city.hirosaki.aomori.jp/gaiyou/shisetsu/kyuutosyo.html
